公安学校の日記

恋人は公安刑事が大好きです。

ラブストリーはカレから突然に♡ 石神 2話

翌日。

夜遅かったせいか、私は予定の時間より遅い時間に起きてしまう。

急いで待ち合わせ場所に向かうと、すでに石神さんの姿があった。

結衣

「す、すみません!遅くなりました!」

石神

「いや、時間ちょうどだ。それよりも…」

結衣

「あっ…」

石神さんは私に手を伸ばすと、髪の毛を整えてくれる。

石神

「慌てるのは分かるが、君も女なんだから身なりには気をつけろ。潜入捜査の時は特にな。」

結衣

「は、はい…」

石神

「それに…せっかく、今日の服装は似合っているんだからな。髪の毛が跳ねていたら台無しだろう」

結衣

「え…?」

石神

「…行くぞ」

石神さんは私が何か言う前に、背中を向けて歩き始める。

私より少しだけ前を歩いているけど、歩調を合わせてくれていた。

石神

「今日は車で移動をするぞ」

結衣

「あっ…」

石神さんは慣れた手つきで私の手を取ると、そのまま車へエスコートしてくれる。

(なんだかこういうの…すごく恋人っぽくて、いいな…)

 

そして、石神さんの車に乗ってやってきた場所は、和スイーツのお店だった。

結衣

「このお店…」

(鳴子と旅行の計画を立てていた時に話していたお店だ…)

話題のスイーツ店のせいかお店から列が伸びており、しかも女の子やカップルだらけだった。

石神

「どうした?並ばないのか?」

結衣

「い、いえ!並びます!」

私たちは最後尾に並び、十五分ほど並んでお店に入った。

 

注文をしてしばらくすると、私の前には抹茶パフェ、石神さんの前にはクリーム大福が運ばれてくる

(石神さんが和菓子を頼むなんて…)

(普段は加賀教官を思い出すからって、ほとんど口にしないのに…珍しいな)

石神

「…食べないのか?」

結衣

「い、いえ!いただきます」

スプーンでパフェをすくい口に入れると、抹茶の濃厚な味が広がった。

結衣

「美味しいです!」

石神

「そうか」

結衣

「石神さんも食べてみますか?」

<選択してください>

B:石神にあーんをする

結衣

「石神さん、どうぞ」

私はパフェをすくうと、石神さんにそのまま差し出す。

石神

「……」

結衣

「石神さん?どうかして…って、す、すみません!つい…」

石神

「いや…」

結衣

「あ…」

石神さんは少しだけバツが悪そうにしながらも、パクッとパフェを食べた。

 

スイーツ店を出た私たちは、徒歩で移動していた。

結衣

「持ち帰り用まで買って、あのお店気に入ったんですね」

石神

「…まぁ、プリンには劣るが意外と悪くなかったからな」

(ふふっ、石神さんったら本当に素直じゃないんだから)

(パフェや大福も美味しそうに食べていたし…)

こういう一面を見れるのが自分だけだと思うと、何よりも嬉しかった。

 

そして、次に私たちがやってきたのは、ふくろうカフェだった。

結衣

「わぁ、可愛い!」

ふくろうはあちらこちらにおり、キョロキョロと見回してしまう。

結衣

「いろいろなふくろうがいますね」

(でも…ここのふくろうカフェも、鳴子と計画していた場所なんだよね。偶然、なのかな…?)

石神

「近くに寄って見てみるか?」

結衣

「はい!」

ふくろうの近くに寄って手を差し延ばすと、ちょこんと腕に飛び乗った。

結衣

「ふふっ、可愛い…」

石神

「……」

ふくろう

「……」

結衣

「あ、あの…」

石神

「……」

ふくろう

「……」

(い、石神さんの眼光に、ふくろうが怯えている!?)

結衣

「石神さん!もうちょっとこう…ニコってしたらどうですか?」

石神

「……」

ふくろう

「…っ!」

石神さんは私のアドバイス通りに少しだけ口元を緩めて見せるも、

ふくろうは更に怯えたようだった。

(ど、どうすればいいの…!?)

店員

「お客様、当店では記念撮影を行っております。よかったら、どうですか?」

結衣

「あっ、はい!それでは、お願いします」

店員

「それでは、少々お待ちください」

店員さんが、大人しいというふくろうを連れて来てくれる。

私、ふくろう、石神さんの順に並び、店員さんがシャッターを切ろうとすると…。

ふくろう

「ホー!ホー!」

石神

「っ、何を…!」

結衣

「あっ…!」

パシャッ!

シャッターが切られる寸前に、突然ふくろうが暴れ出す。

そして、出来上がった写真を見てみると、ふくろうが端に移動して、

私と石神さんの2ショットのような構図になっていた。

 

それからふくろうカフェでお茶をした私たちは、次の場所に向かっていた。

石神

「散々な目に遭ったな…」

結衣

「そ、そうですね…」

(あの後、お茶をしている時に眼鏡をつつかれそうになったり、食べ物を取られそうになったり…)

(しかも、石神さんだけなんて…なんでこんなに相性が悪いんだろう?)

(だけど、写真は2ショットみたいになってて…ちょっとだけ、嬉しいな)

石神

「…気を取り直して、次の所に行くか」

 

そして石神さんが連れてきてくれたのは、当たると評判の恋占いの館だった。

(石神さんが恋占いの館なんて…ちょっと、意外過ぎるかも…)

(それに、ここも鳴子と計画していた場所だし…もしかして…)

占い師

「占うのはふたりの相性でいいかしら?」

結衣

「はい。お願いします」

占い師

「では、始めるわね」

占い師は私たちの顔や手相をじっと見て、占い始める。

(ど、どうなんだろう…緊張するな…)

占い師

「…分かったわ」

「あなたたち、ふたりの相性は…ピッタリね」

結衣

「本当ですか!?」

占い師の言葉に、ほっと息をつく。

(ふふ、石神さんと相性がピッタリ…よかった)

石神

「……」

結衣

「石神さん、私たちの相性ピッタリだそうですよ」

石神

「そうだな…」

私が満面の笑みで言うと、石神さんは口元を緩めた。

(石神さんとデートが出来て、相性もピッタリって言われて…今日はいいこと尽くしだなぁ)

占い師

「相性はピッタリだけど、もちろん油断は禁物よ」

「恋するふたりには、必ず障害が訪れるものなんだから」

結衣

「障害、ですか…?」

占い師

「ええ。でも、あなたたちならきっと、どんな障害も乗り越えられるんじゃないかしら」

「そして、長続きの秘訣はお互いが無理をしないことよ」

「まぁ、これはどの恋人たちにも言えることなんでしょうけど…あなたたちは、特にそう」

「あなたよりも、カレの方が無理をしている傾向があるわ」

結衣

「え…?」

石神

「……」

占い師

「何か思い当たる節があるんじゃない?」

<選択してください>

A:石神に声を掛ける

結衣

「あの…石神さん?」

石神

「……」

石神さんは私にチラリと視線を向けて、一瞬だけ眉をひそめた。

石神

「青山…」

そして占い師に向き直り、ゆっくりと口を開く。

石神

「…例え無理をしたとしても、青山を思っての行動だ。なのに、苦に感じるわけないだろう」

占い師

「それ、本心かしら?」

石神

「当たり前だ」

占い師

「あら、ハッキリ言うのね」

石神

「それだけ、青山のことを想っているからな」

占い師

「想っているだけじゃ、ダメなこともあるんじゃない?」

石神

「……」

結衣

「あっ、石神さん…っ!」

結衣

「…行くぞ」

石神さんは私の腕を引き、占いの館を後にした。

 

石神さんは私の腕を引いたまま、車を止めてある駐車場にやってきた。

和スイーツ店にふくろうカフェ、それに恋占いの館…)

(今日行ったところは、どこも鳴子と計画を立てていた場所だ)

(それに、さっきの占いの時も様子がおかしかったし…)

結衣

「あ、あの…石神さん!」

石神

「……」

私が声を掛けると、石神さんは足を止める。

石神

「…なんだ?」

結衣

「えっと、その…」

(なんて言えばいいんだろう…)

迷っていると、石神さんのポケットから紙が落ちるのが見えた。

結衣

「あっ、何か落としましたよ」

石神

「っ、それは…」

拾った紙に視線を落とすと、そこには見慣れた文字が並んでいた。

結衣

「これ…私が鳴子と計画してた旅行の…?」

石神

「……」

私が視線を上げると、石神さんは観念したというように話し始める。

石神

「…青山が落としたのを黒澤が見つけて、俺に渡してきたんだ」

結衣

「そうだったんですね…」

石神さんの言葉を聞き、疑問に思っていたことがひとつずつ埋まっていく。

石神

「この連休は、佐々木と旅行の予定を立てていたんだろう?なのに、俺の手伝いで中止になった」

「今回のことだけじゃない。青y間には俺の補佐官をしているせいで」

「色々と我慢をさせたり、窮屈な思いをさせている」

「だから、今日はお詫びを兼ねて誘ったんだ」

結衣

「……」

(だから、今日の石神さん、どこかいつもと様子が違ったんだ…)

石神さんがどれだけ私のことを想っていてくれたかを知り、胸がぎゅっと苦しくなった。

結衣

「…私は、石神さんと一緒にいられるのが嬉しいんです」

「頼ってくれることが嬉しくて…窮屈だなんて思ったことありません」

石神

「青山…」

「…ああ、そうだな。青山はそういうやつだったな」

結衣

「ふふっ、伊達に石神さんの彼女をやっていませんから」

石神

「本当、言うようになったな」

「…まぁ、俺と付き合っているくらいだ。それくらいの度胸がないとな」

石神さんはいつものように、フッと笑みを浮かべる。

だけどその笑みはいつもよりも、ずっと優しいものだった。

 

to be continued