公安学校の日記

恋人は公安刑事が大好きです。

ラブストリーはカレから突然に♡ 石神 1話

公安学校では休みを返上して、強化合宿が行われていた。

石神

「強化合宿はこれで終わりだ。しかし、明日からの通常講義も気を抜くなよ」

全員

「はい!」

石神

「それでは、解散」

石神教官の言葉に、教場の緊張の糸が緩むのが分かる。

教官たちの姿が見えなくなり、無事に合宿を終えたことに同期たちは安堵の息を漏らしていた。

鳴子

「はぁ~、ようやく合宿も終わりだね!」

結衣

「うん。お疲れ様、鳴子」

鳴子

「結衣もお疲れ」

「鬼のような合宿だったけど、こうやって無事に終えると達成感があるわね」

「それに今回休日を返上した分、今度、三連休をもらえるって教官が言ってたしね」

結衣

「うん!休みは久しぶりだし、何をしようかなぁ」

(石神教官と一緒にいたいけど…教官たちも休みなのかな?)

鳴子

「ふっふっふ…」

結衣

「な、鳴子?何、その怪しい笑みは…」

鳴子

「結衣は今、次の三連休に誰と過ごそうか考えてるわね!?」

結衣

「っ!?そ、そんなことは…」

鳴子

「否定しなくたっていいじゃない。もちろん…好きな人と過ごしたい、とか?」

結衣

「す、好きな人って…」

 

<選択してください>

A:そんな人いないよ

結衣

「そんな人いないよ」

鳴子

「え~、本当に~?」

結衣

「ほ、本当だって!講義に実習に自主練に…それに、補佐官って仕事もあるんだから」

「恋愛をしている時間なんてないよ」

鳴子

「ふ~ん、そう…今回は、そういうことにしておいてあげるわ」

鳴子はニヤリと笑みを浮かべながら、私を見る。

(鳴子は鋭いから、気をつけなきゃ…)

結衣

「…あ、そうだ。私、この後石神教官に呼ばれているんだった」

鳴子

「えっ、これから?補佐官は大変ね」

結衣

「これくらい、どうってことないよ。それじゃあ、行ってくるね」

私は鳴子にそう言い、教場を後にした。

 

合宿でとったデータの整理が終わり、私は一息つく。

結衣

「教官、終わりました」

石神

「ああ、それで全部終わりだ。戻っていいぞ」

結衣

「はい…」

石神教官は書類に視線を落としたまま、私に言う。

(合宿が終わったのに、教官忙しそう…連休のこと、聞いてみたかったけど…)

石神

「…どうした?何かあるのか?」

結衣

「あっ、えっと…」

石神

「……」

教官は書類に向けていた視線を、私に向ける。

真っ直ぐに視線を向けられ、私はおずおずと口を開いた。

結衣

「その、今度の連休のことなんですが…教官たちも、お休みですか?」

石神

「いや、俺たちは仕事だ」

結衣

「そう、ですよね…」

(やっぱり…こればかりは仕方ない、か…)

私は教官の言葉に、思わず肩を落としてしまう。

石神

「…そんな顔をするな」

結衣

「え…?」

石神教官は立ち上がると、私の頭をポンポンっと撫でた。

石神

「青山は今回の合宿で、特に頑張っていたからな。ゆっくり休め」

苦笑しながらも頭に置かれた手に、私の胸はじんわりと温かくなる。

結衣

「教官…」

石神

「それと…いくら久しぶりの休みだからとはいえ、羽目を外すなよ」

結衣

「それはもちろん、分かっています」

石神

「そうか…」

 教官はもう一度私の頭をポンッと撫で、自分のデスクに戻った。

 

翌日。

休み時間になり、私は鳴子とカフェテラスに向かっていた。

鳴子

「はぁ、合宿の疲れが残っているのか、今日の実習は散々だったな…」

結衣

「教官の怒号が、ずっと飛んでたもんね…」

(私も、何度注意されたことか…)

鳴子

「あ~、もうこの話は止めにして、楽しい話をしよう!」

結衣

「楽しい話って?」

鳴子

「もちろん、今度の休日についてに決まってるじゃない」

「結衣は何も予定が無いんだっけ?」

結衣

「うん。特に予定はないかな」

鳴子

「それじゃあ、ふたりで旅行に行かない?」

結衣

「旅行?そういえば、旅行なんてしばらく行ってないかも…」

鳴子

「よし、決まり!連休まで時間もないし、カフェテラスで色々決めよう!」

 

カフェテラスにやってくると、私たちは早速旅行の予定を立てはじめた。

鳴子

「今回の旅行のテーマは『女子力を高める為に話題のスポットを巡る旅』よ!」

結衣

「テーマが長いよ…」

鳴子

「いいじゃない、分かりやすくて。それで、結衣はどこに行きたい?」

結衣

「そうだな…」

私たちは話題のスポットを上げていき、リストにまとめていく。

鳴子

「それじゃあ、こことここは絶対に行って…」

結衣

「あっ、このお店も行ってみたいな」

???

「なんだか楽しそうな話をしていますね」

結衣

「あっ、黒澤さんに…石神教官!」

黒澤

「お久しぶりです!いつでもニコニコ、あなたの黒澤透ですよ~!」

石神

「…黒澤。そのふざけた挨拶は何とかならないのか」

黒澤

「ふざけたなんてヒドイ!いいですか?オレのこの挨拶はですね…」

石神

「青山、佐々木。盛り上がるのもいいが、そろそろ講義の時間だぞ」

黒澤

「って、オレのことはスルーですか!?」

結衣

「えっ、もうそんな時間になるんですか!?」

鳴子

「次の講義は…成田教官だ!急ごう!」

黒澤

「青山さんに佐々木さんまで…」

結衣

「す、すみません…それでは、失礼します」

鳴子

「失礼します」

私と鳴子は慌てながら、教場に向かった。

 

私たちは講義が始まるギリギリの時間に、教場に着いた。

鳴子

「ふぅ、なんとかセーフ…だね」

結衣

「うん…」

(つい、話しこんじゃったから…って、あれ?)

鳴子

「どうしたの?」

結衣

「さっきまとめてた旅行のリストが無くて…」

鳴子

「どこかで落としたのかな?」

「まあ、行き先は大体覚えてるし、後でまたまとめ直そう」

結衣

「うん」

そして私たちが席に着くと同時に、成田教官が教場にやってきた。

(旅行は楽しみだけど、今は講義に集中しなきゃ)

私はノートを広げると、成田教官の講義に耳を傾けた。

 

連休前日。

教官室に行くと、石神教官と難波さんの姿があった。

難波

「それじゃあ、この資料は明後日までにまとめておいてくれ」

石神

「はい」

難波さんは膨大な量の資料を指しながら言うと、教官室を出て行った。

結衣

「あの…もしかして、この量を教官が1人でまとめるんですか?」

石神

「ああ。他に出来る奴がいないからな」

結衣

「……」

(さすがにこの量を明後日までに1人でやるなんて、無茶だよ…)

<選択してください>

A:私も手伝います

(明日は鳴子と旅行だけど、放っておくことなんて出来ないし…)

結衣

「私も手伝います」

石神

「君は明日から連休だろう?俺1人で十分だ」

結衣

「ですが、あまりにも量が多すぎます。それに、1人でやるより2人でやった方が確実ですよ」

石神

「……」

結衣

「あの、教官…?」

石神

「…そうだな。手伝ってもらえるか?」

結衣

「っ、はい!」

こうして私は連休を返上して、石神教官の手伝いをすることになった。

 

連休二日目。

昨日から始めた膨大な量の資料整理は、夕方になり、ようやく終わりを迎えた。

結衣

「はぁ…やっと終わった…」

(これだけの量を1人でやろうとしていたなんて…手伝うって申し出てよかった)

私は鳴子に事情を説明し、女子旅行は中止となった。

ちなみに鳴子は、私の代わりに千葉さんと出掛けることになったらしい。

(ドタキャンになっちゃったけど、鳴子は快く許してくれたんだよね)

(鳴子が戻ってきたら、また旅行に行こうって誘おう)

私はコーヒーを淹れると、石神教官のデスクにカップを置く。

結衣

「お疲れ様です」

石神

「ああ、お疲れ。青山のおかげで、早く終わらせることが出来た」

結衣

「ふふっ、それならよかったです」

(ずっとデータ入力や書類整理ばかりだったけど、ずっと教官と一緒にいられたし…)

旅行に行けなかったのは少し残念だけど、教官と一緒にいられたことが嬉しかった。

石神

「…そんなに、ニコニコしてどうした?」

結衣

「え?」

石神

「そんなに書類整理が好きなら、もっとやるか?」

結衣

「そ、そんな!せっかく終わったばかりなのに…!」

石神

「フッ…冗談だ」

結衣

「教官の冗談は、冗談に聞こえません」

石神

「…君も言うようになったな」

教官はふと視線を窓に向けると、ゆっくりと口を開く。

石神

「明日の予定は空いているか?」

結衣

「明日、ですか…?」

石神

「ああ、青山が大丈夫なら、明日…ふたりで出掛けないか?」

結衣

「っ…!は、はい」

教官からの突然の誘いに、思わず声が上ずってしまう。

石神

「それじゃあ、昼頃駅前に待ち合わせでいいか?行き先はすでに決まってある」

結衣

「はいっ!絶対に遅れないようにいきますね!」

石神

「ああ…」

勢いよく言う私に、教官はフッと笑みを浮かべた。

 

夜になり寮に戻ると、私はクローゼットから拭くを引っ張り出していた。

結衣

「まさか、教官からデートに誘ってくれるなんて…」

(しかも、行き先を決めているって…どこに行くんだろう?)

明日のことを考えるだけで、ソワソワして落ち着かない。

結衣

「こっちの服の方がいいかな?でも、このバッグと合わせるとしたら…」

それから私は夜遅くまで、明日のコーディネートを考えた。

 

to be continued