公安学校の日記

恋人は公安刑事が大好きです。

ラブストリーはカレから突然に♡ 石神 カレ目線

強化合宿が終わり、終日後。

生徒たちは今から三連休が始まる為か、ほとんど寮に残っていなかった。

(2人でやっているおかげか、思ったより早く片付きそうだな)

俺は半分にまで減った資料の山を見て、青山に視線を移す。

結衣

「……」

(合宿が終わってようやく来た連休なのに、まさか手伝うなんて言い出すとは思わなかったな)

(青山はあそれだけ真面目なんだろう)

真剣にデータ整理をしている青山を見て、頬が緩む。

俺は二人分のコーヒーを淹れると、片方のカップを青山のデスクに置いた。

石神

「少し休憩しろ。まだ先は長いんだからな」

結衣

「ありがとうございます」

青山がコーヒーを飲みほっと息をつくと、彼女の携帯が鳴った。

結衣

「あ、鳴子からメールだ」

佐々木からのメールを見ながら、青山は微笑む。

(青山と佐々木は、本当なら今日から旅行の予定だったはず…)

(それなのに、俺の手伝いをするなんて言い出して…)

(補佐官だからといって、無理をしているんじゃないだろうな)

石神

「青山。佐々木との約束はよかったのか?」

結衣

「はい、大丈夫です。鳴子は私の代わりに、千葉さんと一緒に出掛けているんですよ」

石神

「そうか…」

(全然大丈夫じゃないだろう。笑顔で言っているが…顔が疲れているように見える)

(強化合宿の後も講義が詰まっていたから、疲れが溜まっているんだろう)

俺は青山に気づかれないように、ポケットに入っているリストを取り出し視線を落とす。

リストを見ながら、黒澤との会話を思い返した。

 

青山たちと別れた俺たちは、教官室へやってきた。

黒澤

「ふむふむ…和スイーツ店にふくろうカフェ、それに占いの館、か…」

「旅行にでも行くんでしょうか?いや~、うらやましいですね!」

石神

「何を言っているんだ?」

黒澤

「じゃーん!こんなの拾っちゃいました~!」

石神

「それは…」

(文字からして…青山のものか?)

黒澤

「さっきは慌てていましたからね。落としてしまったんでしょう」

「ってことで、石神さん。はい、どうぞ!」

黒澤はニッコリと笑みを浮かべながら、俺にリストを渡す。

石神

「…何故、これを俺に?」

黒澤

「またまた~、最後までオレに言わせるつもりですか?分かってるくせに~」

石神

「…くだらない。さっさと仕事に戻れ」

黒澤

「あっ、ちょっと待ってくださいよ~!」

 

(…黒澤のやつ。絶対に狙っているな)

黒澤の思い通りに動くつもりなど一切ない。

(しかし、息抜きをさせた方がいいのも事実、か…)

俺はあることを心に決め、資料整理に戻った。

 

そして、翌日。

朝から残りの資料の山に取り掛かり、夕方には片付けることが出来た。

結衣

「お疲れ様です」

先にデータ入力を終えた青山が、俺のデスクにコーヒーカップを置く。

石神

「ああ、お疲れ。青山のおかげで、早く終わらせることが出来た」

結衣

「ふふっ、それならよかったです」

(あれだけの仕事をこなして疲れているだろうに…何をニコニコしているんだ?)

石神

「そんなに書類整理が好きなら、もっとやるか?」

結衣

「そ、そんな!せっかく終わったばかりなのに…!」

石神

「フッ…冗談だ」

結衣

「教官の冗談は、冗談に聞こえません」

石神

「…君も言うようになったな」

俺はふと視線を窓に向け、昨日思いついたことを口にする。

石神

「…明日の予定は空いているか?」

結衣

「明日、ですか…?」

石神

「ああ。青山が大丈夫なら、明日…ふたりで出掛けないか?」

結衣

「っ…!は、はい!」

俺の誘いに、青山は嬉しそうな声を上げる。

(ここまで喜ぶとは…誘ってみてよかったな)

 

俺は自分の部屋に戻ると、明日のプランについて色々考えていた。

石神

和スイーツ店にふくろうカフェに占いの館、か…」

(普段の俺なら絶対にこんなところに行かないし、行きたいとも思わないだろうな)

石神

「っ、これは…」

リストを眺めていると、『石神教官へのお土産を買う』と書かれていた。

更に、『いつか教官と一緒に行けたらいいなぁ』と書かれている場所もある。

石神

「……」

(青山のやつ…)

リストを見ながら、頬に熱が上がるのを感じた。

(まぁ、今回はいつも無理や我慢をさせているお詫びも兼ねているんだ)

(たまには、これくらいのことはしてやらないとな)

俺はリストを見ながら、夜遅くまでデートプランを練った。

 

翌日。

俺たちはデートプラン通りに和スイーツ店、ふくろうカフェを回る。

そして最後に占いの館に行くと、俺は青山の腕を引き駐車場までやってきた。

(あの占い師、余計なことをずけずけと…)

結衣

「あ、あの…石神さん!」

石神

「…なんだ?」

足を止めると、俺のポケットからある物が落ちる。

結衣

「あっ、何か落としましたよ」

石神

「っ、それは…」

結衣

「これ…私が鳴子と計画してた旅行の…?」

(青山も薄々感づいていたようだったが…ここでバレるとはな…)

俺は観念し、今回のデートのいきさつについて話す。

石神

「…今回のことだけじゃない」

「青山には俺の補佐官をしているせいで、色々と我慢をさせたり、窮屈な思いをさせている」

「だから、今日はお詫びを兼ねて君を誘ったんだ」

青山は俺の言葉を聞くと胸に手を当て、微笑む。

結衣

「…私は、石神さんと一緒にいられるのが嬉しいんです」

「頼ってくれることが嬉しくて…窮屈なんて思ったことありません」

石神

「青山…」

(本当なら文句を言われても仕方がないと思っていた)

(だけど青山は常に前向きで、俺を支えてくれている)

(本人は無自覚なんだろうが…そんな青山の存在に救われているのも、事実だな)

改めて青山への想いに気づき、強い感謝の気持ちが生まれた。

 

そして今度は俺の行きたいところに連れて行ってほしいと青山に言われ、

俺たちは高台にやってきた。

結衣

「っ…」

一面に広がる夜景を見て、青山は言葉を失っているようだった。

石神

「どうだ?」

結衣

「すごく綺麗で、なんて言えばいいのか…」

石神

「そうか…それだけ喜んでもらえるなら、連れて来たかいがあったな」

「ここはあまり人が来ない、穴場なんだ。…今までに、誰にも教えたことがない」

結衣

「そうなんですか?」

石神

「ああ。時々気分転換をしに来るからな。その時、知っているやつがいたらイヤだろう?」

結衣

石神さん…」

(…そうだ。今までここにひとりで来るのが当たり前だった)

(誰にも教えようとは思わない。俺だけが知っていればいいと思っていた場所なのに…)

不思議と、青山に知られるのはイヤだと思わなかった。

むしろその逆で、青山になら教えてもいい…青山と一緒にこの光景を見たい。

そう思っている自分がいることに驚いた。

(自分で言うのもなんだが…仕事人間の俺が、こんな風に思うようになるなんてな)

(青山と初めて会った時は、まさか俺たちがこんな関係になるなんて思いもしなかった)

(当時の俺に言っても絶対に信用されないだろう)

もう一度、夜景に視線を戻す。

青山がいるだけで、いつも以上に綺麗に見え…そして、心が満たされるように感じた。

結衣

「あの、石神さん…」

石神

「なんだ?」

結衣

「私…もっともっと、石神さんの傍にいたいです。石神さんのことを知って…私のことを知ってほしい」

「もっと石神さんと歩み寄りたいって…そう思っています」

石神

「青山…」

結衣

「だけど、私たちは教官と生徒という立場で、今はこの関係を隠さなければいけなくて…」

「頭では分かっていても、私は…」

石神

「っ…」

可愛いことを言う彼女を、腕の中に閉じ込める。

(青山は大丈夫だと言うが…これから先も、窮屈な思いをさせてしまうことがあるだろう)

(だけど、俺は…青山に寂しい思いをさせたくない)

青山が隣にいて、心から幸せに思う。

俺は感謝の言葉を伝え、青山の唇にそっとキスをした。

 

♡Happy End♡